曖昧で緩い世界

自由に働けるようになりたい。面白いことを考えて、みんなも自分も楽しくなるモノを作りたい。

拡張現実の中に現れた天才。Ingressと中原中也

今日から正月休みだ。昨日は休み前だからと一人で飲み過ぎた。連休の予定は何もない。二日酔いの朝。冷えた空気に真っ青な空が眩しい。食料を求めコンビニへ行く。徒歩2分のセブン。買い物を終え、ふと開いたIngress。セブンのビニール袋をぶら下げたまま近所をウロウロ。そのまま拡張現実の世界へ深く深く入っていく。いつの間にか1時間近く近所を徘徊していた。しまった帰れない。まだレベル4。HACK、HACK、HACK

 

 

よごれちまったかなしみに

きょうももこゆきのふりかかる

よごれちまったかなしみに

きょうもかぜさえふきすぎる

 

 

黒と緑と青の世界から背後を振り返る。そこには小学校に入るか入らないか位の女の子がいた。ピンクのブーツを履いたその女の子は釣り竿のように木の棒に糸を結びつけ、その先端にはスパークリングワインのコルク栓が結び付けられている。歩道に面したワイン教室らしきお店の前の段差に座り、釣りのように歩道へ向けて勢い良くコルク栓を投げていた。

 

 

よごれちまったかなしみに

きょうももこゆきのふりかかる

よごれちまったかなしみに

きょうもかぜさえふきすぎる

 

 

そう言いながら彼女は歩道で釣りを続けている。彼女は何を釣ろうとしているのだろうか。黒い世界で青のゆらめきを信じている僕は頭の片方でピンクのブーツがはしゃぐ歩道に片方の頭で真っ黒な世界から沸き上がる青い力を見ているのだ。

 

よごれちまった

「お父さーん!釣れたよ!釣れたー!」

 

僕は小さなスキャナーを見つめたまま真っ黒な家へと向かう。なんの釣果もないままに。連休の予定は何もない。